アンディーさんの旅日記「フォンデューの里」

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“フォンデューの里”

  199*年11月*日

  午前中に、ドイツのミューヘンで仕事を終えた、我々一行4人はそのままアウトバーンに入って、
一路スイス方向へ向かう。
一行4人とは、ドイツ語ペラペラのK氏、イギリス赴任予定のU氏、日本から出張中の上司の
S課長に私である。

“さあー!!今週の仕事も終わりで、週末はスイスでバケーションだ!!”

と意気揚々とする私である。
どのみち、来週の月曜日は、スイスのある会社を訪問する事になっている。
土日だけのバケーションなんて、ありはしない。ただの、週末なだけである。

“とりあえず、スイス国内まで直行だ!!”

  アウトバーンをK氏さんのアウディーで、巡航速度180キロで突っ走る。
この速度で走っていると、車の音で話し声は聞き取りにくい。
やっぱ、そこがベンツとかBMWと違うところである。
ベンツだと、220キロの速度で走っていても、いたって静かなもので、
さすがドイツのアウトバーンを走るのを前提とした設計の車である。

“ミューヘンのビールは、ほんといろんなのがいっぱいあったなあ!”
“そうそう、濁ったビールあり、赤いビールあり、もちろん黒ビールもある!”
“でも、結局ピルツが一番日本人にあうなあー!”

  ピルツというのは、ドイツであればどこにでもある、キリンビールみたいな最も一般的な
ビールの総称である。
但し、ビンとコップが出てきて自分でビールを注いで飲む事は、ドイツではお目にかかった事が無い。
ビールをコップにより木目細かい泡を立てて、正確にビールと泡の割合が1:9になるように
注ぐのが、その店のビールの味を左右するものだとドイツ人は言う。

  日本でも、全く同じビールを、プロの人がコップに注いだのと、シロートが注いだのとでは、
全くおいしさが違っていたというのを、テレビで見た事がある。
まさに、そのこだわりがドイツではあるのだ。

  今回仕事でドイツをまわっていて、最も困るのが買い物である。
日曜日には、観光地のおみやげ屋以外の店屋が全て営業していない事だ。
日曜日は、教会に行ってお祈りをしておとなしく休息するのがヨーロッパの慣習であり、
週末の買い物は、もっぱら土曜日である。
だから、日曜日に街の繁華街へ繰り出しても、人通りがまばらである。
我々は、週末の土曜日にだいたい長距離移動する旅であるため日曜日に店屋がやっていないのは、
大変困るのである。
まあ、その分お金を節約できますがね。

  そうこう言っている間に、スイスへの国境に到着である。
ヨーロッパ内の国境超えは至って簡単で、パスポートを車越しに渡して、 1分で終わりである。
まあ、日本で言うと高速道路でチケットの検閲をする程度のものである。

“おーお! とうとうスイスにはいったぞーーー!!”
と言うのはイギリス赴任予定のU氏である。

“おめーは、感動するこたーーーないだろう。これから、10年間はこっちにいるんだから・・・!”
“な、な、なんだとー! 5年間の約束で了解してんだぞー!!”

U氏は、顔を赤くして言いまくってる。
まさに、U氏は会社の陰謀になんなくかかってしまった、ワカサギの一人である。
ほら、ワカサギって湖で釣る魚がいるでしょう。
20本くらいの針をつけて、そこに5−10匹くらいのワカサギがいっぺんに釣れるんです。
U氏も、そのうちの1匹である事は、まぎれもない事実である。

“おーお、 わかった、わかった! 一応5年、5年ね!!”

みんなで、U氏を軽くあしらっている。
スイスの高速道路は、ドイツの速度無制限のアウトバーンと違って、最高時速100キロまでである。
一気にペースダウンって感じで、社内での話声も普通に聞き取れるようになった。

  スイス国内に入ると、周りの景色が一変する。住宅が極端に少ない。
そのかわり、牧草地帯が広大に広がっており、その奥にはドス黒い山肌があちこちに
見えてくるようになる。

“おー!さすがにスイスらしくなってきたぞーー!!”
“今日の宿を捜すとすっかあー!”
っと、街らしき標識を見て、インターを降りる。
下道を15分も走ると、それなりの街に着き早速ホテル探し。
もう、ドイツ語ペラペラのK氏がいる限り、安心安心。
そのへんに歩いているおっちゃんをつかまえて、ホテルのある場所を聞きまくって到着。

こんな田舎町にあるホテルで、満室であるはずが無い。
“4人だけど今夜の部屋は空いてる?”ホテルのじーやんは、帳面をぱらぱらめくって
“なんとかOKだよ!”って、ふりをしている。

どう考えても、この雰囲気では誰一人泊まっている様子が無い事は、バレバレなのにーー!
これが、ドイツ人のプライド! っなわけないっか?

“さあ、まだ3時だから、このあたりを散策するとしよかあーー!!”
もう、仕事はすすんでやらないU氏が、こういうことは積極的だから、あきれてしまう。

“それよっか、今日の晩飯はなんにすっか?”
“せっかくスイスに来たんだから、スイス名物チーズフォンデューに決まってんじゃん!”
私のたっての提案である。

“なにー!!チーズブレンディーだって! おれは、チーズがあんまし・・・!?”
と上司のS氏が食い下がる。
“違うって! チーズフォンデュー!フォンデュー!! 本場のは、おいしおまっせーー!!

こういう時には、上司の言う事をきかないのが常である。
みんな、S氏の意見はうわのそらできいていて、すぐさま決定。
早速、ホテルのじーやんに、この街で一番おいしくて有名なチーズフォンデューの店の場所を
聞いている。

  荷物をホテルの部屋において、ロビーに行くと、K氏が、なにやら先ほどの
じーやんとは別のボインむっくりねーちゃんと話に熱中している。
紙と鉛筆で、なにやら書いている。

“さっきのじーやんでは、話にならへんもんだから、このボインちゃんに店屋の場所を聞いてんだい!”
といいつつ、ドイツ語でそれ以外の事も、べらべらしゃべっている事間違いなし。
K氏は、きれーなねーちゃんを見つけるといつもこんなんだよなあ!
こうでないと、とても単身での海外生活なんかやっておれまへんなあー!

“くっそー! ドイツ語さえしゃべれればなあー!”
って、大学時代にええころ加減に単位だけ取ったドイツ語を悔やんでも、もう後の祭りであった。

  やっっと、K氏とむっくりねーちゃんの話が終わって
“歩いて行けるところに、いい店屋があるみたいだけど、めっちゃややこしい
入り組んだところにあってわからないから、地図まで書いてもらってたんよーー!!”
とてもそれだけではない事は、見え透いている。
たしかに、地図を見て、わかりにくい事は確かなようだ。

“まずは、この店屋の場所確認して、予約を入れておいて周りを散策するとすっか!”
地図を片手に歩いていくが、思ったより遠い。
歩いて10−15分とあのむっくりねーちゃんは言っていたが、もうかれこれ20分以上は
歩いている感じがする。

“店屋があった!あった!”と意気込んでるのは、U氏である。
“よーし! これで場所がわかったから、ちょっくら散策するっか!”

店屋を前をUターンして、この街のメイン通りにもどる。
“あっ、あの店屋に予約すんの忘れてたあーー!! まあいっかあー”
すぐにあきらめる性格のK氏であった。

  メイン通りを歩いていると、なんといかにもつぶれそうな映画館があった。
“まだ、4時で早いから、映画でも見るっか? はては、何語で放映してるんだろう?”
“字幕スーパとも何にも書いてないから、何語かわからんなあ!”
“入ってからの楽しみにしようか?”

  結局、赴任と赴任予定者のK氏とU氏だけが見ることのなった。
だって、私とS氏は英語でさえおぼつかないのに、何語かわからへん映画なんて見ても
寝てるだけであるからである。

“よーし、ホテルで6時半に集合だ!!”
彼らは映画館へ、私とS氏は街の散策へと、別行動になった。

  メイン通りを歩いていくと、背の高い建物が、正面に見えてきた。
教会だ! ヨーロッパの街には、必ずといっていいほど、中心部に大きな教会が必ず建っていて、
スイスもその例外ではなかった。
窓ガラスに描かれたステンドグラスは、やはりカラフルできれいだ。
どう見ても、数百年は経っている教会であることは、その姿(よく見るとボロボロ)で
すぐさま把握できる。

  ヨーロッパの一般家庭の家でさえも、数百年前に建てられたものが、ざらにある。
新築と呼ばれるようなものは、市街地には見かけたことがなく、古い建物を修理と補修をくわえて
大事に使っている。
やはり、数百年ももつのは、レンガ造りのせいでもあろう。
その古き物を大事にする精神は、日本人も見習ってもらいたい物である。

店屋を覗くと、どこでも例の有名なスイスのVictrinoxのアーミーナイフを見つけることができる。
日本で買う値段とあまり変わりないが、種類は格段に多い。

“おっ、安いのがあるぜー!!”と思ってよく見るとVictorinoxもどきのまがいもの。
“あぶねえー、あぶねえー!!”
“こんなとこまできて、まがいもん買ってたら、後世まで汚名が・・・・・?!”
“あーあ、疲れてきたから戻ろうか”

  ホテルに戻ると6時10分ををすぎていて、ロービーのソファーに座っていると噂の映画組が
戻ってきた。

“やっぱドイツ語だったなあ、もうさっぱりストーリーがわからんぞー!!”
って言うのは、赴任予定のU氏であり、もうねほりはほりK氏に聞いている。
その話を聞いているだけで、大体のストーリーの内容が、映画を見ていなくても
十分にわかるくらいの説明だ。
結局、ストーリがわかっても、おもしろいとはとても言えないサスペンス物の映画だったみたいである。

“おいおい! K氏がU氏に説明しているのを見ている方が、映画よりおもしろいぞー!”
S氏が言うのは、まったくもっともな話だ。

“腹減ったー!! よっしゃー、 チーズ屋にくりだすとするっかあー!!”
さきほど行ったとおなじように、くねくね曲がっては曲がって、こんどは場所がわかってるせいか、
すぐに店の前までたどり着く。

“予約しわすれたけど、でーじょーぶかいなあ!”
ってドアをあけた瞬間、すっげーチーズのにおい!におい!ニオイ!ニオイ!
もう、S氏の顔が、もうはちきれんばかりにめっちゃゆがんでひきつってわなわな震えてるーーー!!
しかも、何人もの人が席を空くのを待っている。
みんな、年の頃は50を過ぎた、地元の常連さんだろう。

“こりゃあーたまらん!!!!たまらーーーん!!!!!!”S氏は、もう店屋から
逃げたい一心である。
私もチーズは好きだが、このワインのニオイが混じったチーズの強烈なニオイは、
さすがの私もむせるほどだった。

  席があくまでの30分間は、店の外で待っていたが、S氏を引っ張り込む説得に明け暮れた。
結局、ドイツ語の話せるK氏がいないと、別の店で佐本さんだけが食べるわけにも行かずしぶしぶ同意。
(おーーー、しめしめ!! 我々の思う坪だがやあー!!)

  やっと席が空いて店の中に入ると、さっきよりは少しは馴れたせいか、むせることはなかった。
佐本さんは、さすがにむせてもう、しかめっつらだらけ。しかし、10分も店の中にいると
このにおいに完全に溶け込んでしまうところが、不思議なもんだ。

“えらーーい混みようだなあ。こりゃあー、このあたりでは有名な店屋かもしれへんぞー!!”
(あとで聞いたら、ほんと有名なチーズフォンデュー専門店だった!)

  ビールとオードブルを3品ほどたのみ、あとはフォンデューを4人分たのむ。
オードブルは、なんかわけのわからないサラダとサーモンのマリネ風にポテトの焼いたやつ。
まあ、食べれる程度のもの。ビールはさすがにスイスでもうまい!うまい!
ビールのおかわりをが出てきたころに、メインのフォンデューがお出まし、お出ましー!!

でっかいバスケットに、サイコロをひとまわり大きくしたような、フランスパンを切ったものが、
もう山盛り、こぼれんばかりにのっけてある。しかも、2バスケットも・・・。
チーズフォンデューは、これまた直径30センチはあるまさにおでん用の鍋に、
めいっぱいはいっていて、ぶくぶく泡が出るほどちんちんに煮立っている。

“ひえーーー!! こんなに食えるんけーー!! さあーS氏、食べてーー!!”
もう、しかめっつらをとおりこして、くまめっつら、とらめっつら、ぞうめっつらくらい!
長さ30センチはある鉄の串で、そのサイコロパンを突き刺して、鍋の中に入れて、
チーズをからませて食べる。

“ほっほっほ、 あっちー!! もぐもぐ、おー、こりゃあーうめーぞ!!”
“ほらほら、S氏も、食って食って! たくさん食わんと、減らへんぜい!”
ほんと、白ワインと何かを混ぜたチーズは、ニオイはすごいが、味はあますっぱいっていうか
もう絶品です。
パンはそのまま食べると、カリコリ固くってお菓子みたいだが、チーズに漬け込むと
表面がほどよい固さになって、相性も味も最高。
これは、使っているチーズが日本で食べるのとは一味も二味も違う。
まさに、本場スイスのフォンデューである。

  S氏が、先ほどとは打って変わって、パンの突き刺すののはやいこと、はやいこと!!
“このチーズは、いけるいける!! おい、おい、みんな、どんどん食べんと、減らへんぞーー!!”
このとき、ゲンキンもののS氏の真実を、私は見てしまった。
みんなは、あっけらか〜〜ん!!

もう、鍋の隅についたチーズまで、パンできれいにさらえて、もうあっという間の出来事であったのだ。
“おーくったくった!! こんなにウメーもんとは、イガッタ、イガッタ!”
S氏が一番必死で食べていた事は、言うまでもない。

  店を出ての話題は、もうフォンデューの話でもちきり。
“30分も、待ったカイあり! う、ゲップ! うわーー!! さっきのにおい〜”
このゲップは、明日の夕方まで、そこらじゅうで出て、チーズのにおいを撒き散らす事になった。

“よーし、スイス名物も満喫できたし、明日はインターラーケンまで繰り出すとするかあー”
インターラーケンとは、ユングフラウヨッホ、別名アイガーの北壁のふもとにある、
観光地の名前である。

******* 次に続く *******

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